無題 (逆裁/若御剣×だるほどさん)
ふと、凶暴な感情に囚われる。
――貴様さえ いなければ。
常に理性的であれとの師の言葉すら虚ろに、私は激情に任せて手を伸ばす。
パーカーを纏った腕を捉えると、そのまま引き寄せ、勢いのままにねじ伏せた。
「……なに?」
見下ろす顔は、無精ひげすらあたっていない、年かさの男のもの。
黒目がちの大きな瞳が、何の感情も見せずに、私の顔をただ映している。
その唇が、ふと歪んだ。
「……したいの?」
嘲るような笑みに食らいつく。
抵抗のない唇を割り、舌をねじりこむ。
知らない、こんな衝動は知らない。
知らない、こんな感情は知らない。
……こんな自分自身は知らない。
貴様さえ。
貴様さえ、いなければ。
私の目の前に、現れなければ。
私は一人で、どこまでも歩いてゆけたのに。
優しく髪を梳く指を感じて、一度顔を離す。
見上げてくる瞳に映るのは、泣きそうな顔をした私と、そしてそれを受け入れる慈愛。
「いいよ。……僕も、したい」
やわらかく頬にあてられる濡れた唇と、肌をくすぐるひげの感触。
もう、これを知らなかった時には戻れない。
もう、一人で歩く方法は忘れてしまった。
夜ごとの悪夢、消せない罪の記憶すら、この熱の中に溶けていきそうになる。
溺れるな。
溺れてはならない。
……私は、この人がどこから来たのかすら知らないのに。
「でも僕はもうおじさんだから、手加減してね?」
くすくすと耳元で笑う声を聴きながら、私は彼の帽子ごと、パーカーを奪い取った。
☆☆
特に設定はないけど、たぶんタイムスリップネタ。
けむひこさんとさきすけさんにえちゃで遊んでいただいた際に出された若御剣×だるほどくんというテーマ+数日前にツイッターでリツイートされた、「1RTなら頬にキス、5RTならべろちゅー、10RTなら服を脱がせる」のお題使用。
執筆所要時間は実質20分くらい?