海賊王家の紋章Ver2 「運命の出会い」

おれの名前はルフィ。17歳。
フードファイトが趣味な、ごく普通の能力者だ。
生まれはアメリカだけど、じいちゃんのコネでエジプト留学してる。
そんなおれの運命が突然変わったのは、数日前のこと。


乱暴に、石の床の上に放り出された。
いってェな、おれがゴムじゃなかったら怪我してるぞ。
放り出した奴をギッと睨んでやったけど、そいつはこっちを見向きもせずに、大声で誰かを呼んでいる。
「おい!パティ!カルネ!だれかいねェのか、クソ野郎ども!」

変な眉毛、というのが第一印象だった。
わけもわかんねェうちに、いきなり掬いあげられて馬に乗せられたから、この人攫いの姿をちゃんと見たのは初めてだ。
キラキラ光る金髪、ちょっと軽薄な感じの顔立ち。
着ているものは、一目でわかるぐらいゴージャスな感じだ。こいつが人攫いだとしても、金目当てってことはなさそうだ。

……我ながら、もう少し動揺したらどうだよ、と思わないでもない。
だけど、ここ数日の激動を考えたら、こんなのはまだ、驚きのレベルとしては低い方だ。
20世紀生まれの平凡な男子学生といえども、ある日突然タイムスリップさせられて、わけわかんねェうちに奴隷労働とかやらされたら、もう人攫いくらいじゃ驚かなくなる。
別に今すぐ殺す気とかはないみてェだしな。

だが、まだおれは甘かった。
本当の驚きは、そのあとにきたのだ。

さらりと、上等の絹が擦れ合う音がした。
「お帰りなさい、サンジさん。何を連れてきたんです?」
サンジと呼ばれた金髪男は、声の方を振り返る。
「あァ、姉上。毛色の変わった奴隷を見つけたので」
「まあ、珍しいこと」
衣擦れの音が、おれの前まで来て止まった。
「……っ!」
目の前で顔をこわばらせるその姿に、おれもまた息を飲む。

短く刈り込んだ髪、病的な目の下のクマ、無精ひげ。
華麗な古代エジプトの装束に身を包んだ、その顔は──

「ギン!?おまえ、ギンだろ…!?」


(続かない)


☆☆

(次回予告)
姉のように慕っていたギンの変貌に困惑するルフィ。一方、ファラオ・サンジは、ルフィに一夜の伽を命じてくる。ふざけんなこのエロ野郎!
次回「忍び寄るMH5!」
「その解毒剤はおれが持ってる……」
お楽しみに!

(だから続かないってば)