ballad(ルフィ)

見よ王が往く、海賊の王が往く
そのこうべを飾る一顆の宝石を
奪われし宝を取り戻さんがため


射干玉の夜を裂くは汽笛の音色
舞い狂い逆巻く波と波のはざま
突き進むくろがねの船上に立ち
若き海賊王はときの声をあげる

風は打つ、波は抉る、雨は穿つ
されど王のまなざしはただ前へ
風を封じ、波を貫き、雨を払い
己が宝を奪いし者を睨み据える

そのかしらには黄金の冠もなく
そのころもには煌めく飾りなし
しかれども見よ、王の身を飾る
宝石よりも貴きつわものたちを


見よ王が往く、海賊の王が往く
そのこうべを飾る一顆の宝石を
奪われし宝を取り戻さんがため


―――名なき語り部の習作




船長感謝祭小咄板に匿名で投稿したもの。
思い出したので拾って来ました。