「なァ、フランキー」 麦わらが、ぽつりと口を開く。 「おまえ、左腕を作ってくれねェか」 「左腕？」 こくりと頷いたその顔は、いつになく真剣だ。 「……どんな腕だよ？」 「……すげェ強い腕だ。ちっこかったおれひとりくらい軽々抱え上げたし、多分剣とか上…

「お易い御用だ、船長」 ──とは、言ったものの。 このわけのわからない悪魔の息子とおれと、たった二人の海賊団で、「船長」なんぞといういかつい肩書きに、何の意味があるのか。 「決まってんだろ。船の進路を決めるのが船長だ」 手漕ぎボートの舳先にまた…

「好きでない人を、好きになる方法はあるわ」 そう言うと、彼は目を丸く見開いた。 「え、嫌いな奴を好きになんかならねェだろ？」 「そうとも限らないわ。人間なんて、意外と単純なものだから」 初めて彼を見たとき、私はどう思ったのだったか。 同じDの名…

某国の細菌兵器が、スパイによって盗み出され、不慮の事故のため雪山に落ちた。低温では活動しないそのウイルスは、春の雪解けを待って一斉に増殖し、世界に広がった。無辜の人々が次々と倒れ、世界は死体に満ち、やがて静寂が訪れた。──世界で最も低温な地…