可愛い(都々逸/ルナミ)

もう本当に、信じられないったら信じられないわ。なんなのよあのバカ船長は。

いい、ウチは貧乏なのよサンジ君。乗っかってる首どもがいくら高額でも、マトモに略奪しない海賊団に、金なんかありゃしないわ。

そりゃ、こっちから町や商船を襲うような海賊団なら、私は死んでも所属なんかしないけど……でも限度ってものがあるわ。

真剣な顔して、船長命令だから金を出せ、って、その金が無尽蔵に沸いて来るとでも思ってんのかしら、あの麦わら頭は。

それで、何を買うの?って聞いたら、内緒だ、とか言うのよ、あの笑顔で!

……もう一杯、注いで頂戴、サンジ君。

……え?……出したに決まってるでしょ。あなたなら、逆らえる?

……わかってるわよ。でも、ルフィじゃなかったなら……私は、ここまで来なかった。……来られなかった。

「おい」

先刻から気配を感じる扉の方に声をかけると、ひょい、と麦わら帽子がのぞいた。

「すげェなサンジ。いつから気がついてたんだ?」

「……ナミさんだって、こんなに酔ってなきゃ気がついたろうよ」

時に暴力的なほどの存在感を放つ、この船の船長は、そうか?と首を傾げたが、すぐに考えることは放棄したらしい。

テーブルで眠り込んでしまっているナミさんのそばに、彼なりに繊細な仕草で置いたのは、小さな包み。

「何だそりゃ」

煙を吐きながら問うてみると、にぃっと、例の笑いが返された。

「この町名産の宝石だ。ナミの髪の色に似てて、綺麗だから買って来た」

「………もしかして、ナミさんに金の無心したのって、そのせいか?」

「そうだぞ?」

「バカだな、なんでちゃんと言わねェんだよ。そしたら、ナミさんだってこんなに怒りゃしないだろうが」

三白眼を一瞬瞠り、それからルフィは、バカだなサンジ、と、呆れたように言った。

「だって、ナミは怒ってる時が一番可愛いだろ?」

〈お酒飲む人しんから可愛い 飲んでくだまきゃなお可愛い〉

☆☆

ゾロル向きなテーマだった気もするが、ルナミで勘弁。

つか、船長ヒドい人だな…。

(メモ1)

TKさま、メッセージありがとですv 死にネタは難しいですよねえ。

(メモ2)

拍手ありがとうございました。