少年の日 春(エール/ネタバレ気味)
記憶をたどれば、目に浮かぶのは薄闇。
慌ただしく動き回る大人達。
──おめでとう。いい兄貴になれよ、
そう言って頭に手を置いたのは、あれは誰だったろう。
ジジイか、村長か、それとも。
次の瞬間おれの記憶の中で、闇は一気に弾ける。
生まれたての赤ん坊は、真っ青な空の下、おれを見て笑った。
……目もまだ開いてない赤ん坊が笑うわけはないと、今は知っている。
だがあの時、確かにルフィは、笑った。
眩しく輝く五月の空の下、その青空にも負けない明るさで。
──いい兄貴になれよ。
そのときから、おれにとって一番大切なものは、ずっと変わっていない。
花咲く野辺、海沿いの道、行手も見えぬジャングル。
見失わないように握りしめたあの小さな手は、今この瞬間も、おれに向けて伸ばされているのがわかる。
……誰か、伝えてくれないか。
地獄の底までおれに会いにきた、あの弟に、「馬鹿野郎」と。
馬鹿野郎、馬鹿野郎、馬鹿野郎。
弟のくせに、兄より先に死にやがったら許さねえ。
見上げる空に、輝く笑顔は見えない。
『野ゆき山ゆき海辺ゆき
真ひるの丘(をか)べ花を籍(し)き
つぶら瞳の君ゆゑに
うれいは青し空よりも。』
(佐藤春夫『少年の日 春』)
☆☆☆
昨日に続いて、少年の日シリーズ。
最初はサンジの瞳ネタかオールブルーネタにしようかと思っていたのですが、読み返せば読み返すほど今週のエースが浮かんできたので、エールに方向転換。
そうなるとバランス的に、夏と冬も別キャラを当てるべきか?と一瞬思いましたが、まあ予定は未定。
なんとか仕事を無事終えたので、今夜23時から、「Black Stone」の拓仄さんのところに遊びに行こうと思います。
サンル好きな方といっぱい話せたらいいなあ!