夢の卵

室温に戻した卵を取り上げた瞬間に、ナミさんがぽつりと言った。

「あいつらは、まるで卵みたいね」

ケーキを焼くつもりだった。誕生日に相応しい、大きなデコレーションケーキ。

辛党である本日の主賓がそんなものを喜ぶとは思わなかったけれど、誕生パーティにケーキがなければこの船の船長が納得しないだろうとは、容易に想像がつく。

「……金色の太陽と、それを守るもの。それだけでひとつの、完全な世界」

「──仕方ないですよ。あいつらはそういう生き物ですし」

かつり、とボウルの縁に卵を当てた。「完全な世界」に、きれいにひびが入る。

「サンジ君は、それでいいわけ?」

軽く睨みつけられて、思わず見とれる。──やっぱり彼女は、とても魅力的だ。

「いいっていうか……だって、卵自身に、卵以外になれといっても無理でしょう?」

慣れた手順で、殻を開く。透明な粘液が、ボウルに落ちる。

「それは、料理人の仕事です」

手にした殻の中には、小さな金色の太陽。

本日のケーキは、卵白のみを使う、純白のエンジェル・ケーキに予定変更となった。

☆☆☆

ゾロ誕ネタ「夢の卵」、「おもちかえり」にあげておきました。もしもお気に召してくださった方がいたら、ご自由にどうぞ。

ついでにサンジ&ナミの裏話(上記)も書いてみたり。ゾロ誕小ネタなのに、名前のかけらすら出てきやしねえ(笑)

その代わり、本編では出ずっぱりなのでご容赦!

ゾロ誕と言えども、サンル前提ル←ナミ気味。

(メモ)

拍手ありがとうございました。

またお暇があったら、のぞいていただければ嬉しいです。