ちょっとこんな感じ?
──よし、それならこうしよう。おれは今日から、おまえの恋人だ。
──おまえはおれが好きで、おれに夢中だ。……有り難く思えよ、おれは本来、レディ専門なんだからな。
「サンジ、ひとくち!ひとくち!」
胸元に無邪気にすり寄り、雛鳥よろしく口を開く。
おれの「恋人」は、今日も色気より食い気だ。
……そもそも、だ。
このおれが、髪の先から足の爪先までレディのために生まれた存在が、こいつに逢ったということからしておかしい。
おれは、「サンタクロース」。人間の夢、とりわけ、サンタクロースに対する色っぽい妄想のアレコレから生まれたもの。
寂しい聖夜を過ごすレディやマダムに一夜の愛を運ぶのが、おれの存在意義。
色気皆無、食い気一辺倒のガキに、用なんかない。
──そのはずなのに。
「……ひとくちだけな。そら」
指先でひとかけら、焼きたてのケーキを摘み、唇に触れてやる。
「おお!サンキューサンジ!」
たちまちケーキを絡めとり咀嚼する、健全な唇と歯と舌が、おれの指から背筋へと、不健全な痺れを流し込む。
そして、
「……美味い!」
無防備で無造作な全開の笑顔が、夜の闇の中で浮かべる表情を思い出させる。
間違った。……それは、間違いない。
だがそれがどこからなのか、わからない。
レディ専門のおれが、このガキに出会ったことか。
あまつさえ、こいつに欲望を掻き立てられたことか。
力づくで奪う手の中、思いがけぬ艶に目を奪われたことか。
奇妙な引力に引きずられるまま、人間達の記憶を操り、こいつのそばに入り込んだことか。
弟を掌中の玉と愛しむ兄たちへの優越感を自覚したことか。
……それとも。
偽りの記憶で、こいつにおれを恋人と思いこませたことか……?
「サンジの飯美味いよな!おれ、サンジ大好きだ!」
陰りのない笑顔は、今宵もおれの手の中で歪むだろう。
頼むから。
おれのことを、好きだと言うな。
☆☆
「間違った」
…で、一応主要登場人物四人の視点終了しちゃったのですが、「どうかしてる」はどうすればいいかなw
まあ登場人物みんなどうかしてるといえばどうかしてるけどさ!
(メモ)
メッセージありがとうございました!
サンジお好きですか。私も好きです!こんなん↑書いてますが(笑)!
大変なときですが、僅かでも元気とか励ましとかの欠片になれれば幸いです。