079 谷(三兄弟)
ここに来るのは、初めてじゃない。
足下には踏み荒らされていない雑草が茂り、上を見上げれば吊り橋が揺れる。
左右を囲む、切り立った崖。
「ルフィ、どうした?」
サボが訊いてくる。
「ルフィ!ぼーっとしてるな、置いてくぞ!」
エースが怒鳴る。
……この前ここを歩いたときは、ひとりだった。
ひとりがイヤで、一生懸命エースを追いかけて、突き落とされた谷底。
「体調でも悪いのか?」
サボが顔をのぞき込む。
「ほっとけ。オオカミ穫れても、役立たずには食わせてやらねェぞ」
エースがそっぽを向く。
ここに来るのは初めてじゃない。
だけどこの谷に、白い花がいっぱい咲いているのには、今初めて気がついた。
サボの髪に花びらが絡み、エースが花を踏みにじる。
「──さっさと来い、ルフィ!」
兄ちゃんたちと一緒に、おれは花咲く谷を進む。
☆☆
たとい我死の陰の谷を歩むとも災いを恐れじ
汝我と共にいませばなり
(詩篇23篇)
☆☆
(メモ)
拍手ありがとうございました。
(私的メモ)
泣き面に蜂。
とりあえず倒れないよう頑張る。
今、私が倒れたら終わりだからな…。