077 宣言(サンル)
おれを海賊にした元・雑用のガキは、今日もいつものハイテンションだ。
「サンジ、これ釣ったぞ!食えるか?」
「サンジ、腹減った!何か食わせろ!」
「サンジ、暇だから遊べ!」
「サンジサンジ、夕焼けがすげーぞ!見ろ!」
……野郎の物とはいえ、好意そのものは吝かではない。吝かではない、が。
「メシはともかく、だ。料理人の仕事を邪魔するのはどういう了見だ」
夜空の星が見事だと伝えに来た船長をひっとらえ、頬をひねり上げながら訊ねる。
ゴムの海賊は痛そうな顔もせず、頬を抓られながら首を傾げた。
「邪魔、してるか?おれ」
「してないとでも言い張る気か?ここに積み上げてある汚れた皿は、誰が使ったもんだと思う?」
「……おれ?」
「正解だ、船長。──じゃあそれを始末すんのは?」
「サンジ」
「大正解。……というわけだから、おれの仕事の邪魔は止めろ。おれはてめェのお遊び相手をするために、ここにいるわけじゃねェぞ」
「──でも」
「あァ?」
機嫌の悪さを隠さない表情でねめつけてやるが、相手は蛙のツラの小便ほどにも堪えた様子はない。
「サンジがここにいるのは、おれに付き合ってくれるためだろ?」
「……!!」
──付き合ってやるよ、海賊王への航路。
……ああ、そうでしたね。
確かにそんなことを、おれは申し上げましたっけね、キャプテン。
「だからサンジは、おれのやることに付き合ってくれるだろ?」
確信をこめた言葉。
……とりあえず今宵は、汚れた皿に別れを告げ、星見に付き合わねばならないようだ。
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(メモ)
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