069 励む(ルッチ)
最初の記憶は、誰かの声。
「──正義の権化たれ」
「また面倒な任務じゃのう」
カクが苦笑いしながら、金槌を手にする。
「無駄口叩く暇があったら、釘の一本でも打て」
「わかっとるわい」
肩をすくめる『仲間』から視線を外し、自らの手元を見下ろす。
金槌、木釘、鉋、鋸、──未だかつて、おれの人生に関わったことのないもの。
学んできたのは、戦うこと。
引き裂くこと、踏みにじること、叩き潰すこと。
……「正義」に仇なすものを許さないこと。
その遂行を妨害するものの排除をためらわないこと。
生まれて初めて持つ道具。
おれ達は、それを誰よりも巧みに扱わねばならない。
誰よりも優秀な、信頼できる船大工として、造船の島での地位を築かねばならない。
……正義のために。
「──破壊するのは簡単じゃが、創るのは手の掛かることじゃなあ……」
「正義」のために、真実を隠し、我が身を変容させて。
……おれは、おれを潤す血を渇望する。
☆☆
カリファとブルーノは楽そうだよね。
(メモ)
拍手ありがとうございました。