ルフィちゃんのたまご

「……最初に挨拶に行くのは、お前の兄貴とじいさんとオヤジさんのどれがいい?」

口をついたおれの言葉に、ルフィはこの上なく優しく──憐れみの目を向けた。

「……おまえ、ほんとにバカだな、サンジ」

そりゃおれだって最初から、これは夢だろうとわかってたさ。

「サンジ!これ見ろ!」

足音も高くキッチンに走り込んできたルフィが自慢げに見せびらかしたのは、一抱えもあるでっかい卵。

「見ろよ、おれの卵!こんなにでっかくなった!」

おれの卵→ルフィの卵→ルフィの子供→当然父親はおれ→責任→結婚→ご挨拶、というおれの光速思考はどうやら道を間違えたらしい。

「これはな、おれの作った、おれの卵だ。村を出たときは、すげえちっこかった。ゾロに会って、ナミに会って、ウソップに会って、ちょっとずつ大きくなった」

「へー……」

「なに膨れてんだよ、サンジ?」

「別に」

「おまえに会ったときも、ぶわってでっかくなったぞ」

「……」

「ビビもカルーもチョッパーもロビンもフランキーもブルックも、みんな卵をでっかくしてくれた。でもなおれ、この卵をでっかくする、一番いい方法を見つけたんだ」

「……ふぅん?」

気のない返事に挫かれもせずに、ルフィは満面の笑みを見せる。

「あのな、サンジ。おまえのことが好きだって思うと、この卵は、すげえでっかくなるんだ!」

……昼下がりの僅かな午睡。

妙な夢を見たような、見なかったような。

未だ混沌の中にある意識に、パタパタとゴム草履の足音が響く。

「サンジ!これ見ろ!……面白ェモン、見せてやるよ!」

☆☆☆

何がどうしてこのようなタイトルになったかについては、詳しくは私設船長研究所か、お頭Z梅子氏のブログ参照。

簡単に言うと、「ルフィちゃんが卵を生んだ。その父親はゾロくんかサンジくんらしい」というニュースを聞いたせいです(笑)