森の子ブタ・ルブー

「あら、ごめんあさーせ。あたしが美しいばっかりに」

湖が濁ってしまった責任を問われたゾロ雪姫さまは、申し訳なさそうに肩をそびやかし、あごを突き出します。

「あ?どのツラ下げて言いやがる、この縦ロールマリモが」

対する湖の女神サンチューさまは、担いだ金の斧をトントンと肩に打ちつけながら、神秘的な眉を寄せられます。

「この森で一番美しいのはこのおれだと、千年前から決まってんだよ!」

「まあ、千年?」

ゾロ雪姫さまは、古木の根のような逞しい首を、小鳥のように可憐に傾げました。

「じゃあさぞかし、お肌もお疲れでしょうね?」

「……言わせておけば、この小娘。一万年ピチピチお肌の女神を敬う心くらい持っとけ」

「あたしは一生女神には祈りませんわ!」

サンチューさまの足が火を噴き、ゾロ雪姫さまは三面六臂の姿に変じます。

まさに血の雨が降らんとした、そのとき。

「なんだ?ケンカか?」

近くの藪がごそりと動き、小さな影が這い出してきました。

ブタの丸焼きのような、曲線で構成されたフォルム。

豚足のような、ちんまりした四肢。

ミミガーのような、コリコリした感じの耳。

丸い鼻と、くるりと弧を描く尻尾。

……まあ、要するにブタでした。

頭の麦わら帽子と頬の傷、赤い上着を、この森の住人ならば知らぬはずはありません。

森で最凶の子ブタ三兄弟の長男、ルブーそのひと……いえ、そのブタに他なりません。

「……ふん」

サンチューさまは、燃える足を止めました。

「おい、第三者の裁定ってのはどうだ?」

「異論はありませんわ」

ゾロ雪姫さまも、愛らしい唇に不敵な笑みを浮かべました。

「んん?」

(続く…かも)

☆☆☆

いつのまにか連載状態のメルヒェンタイムシリーズ。

第一回は8/11、第二回は8/17の掲載です。

前回から、どう展開させようかなーと思っていたのですが、もともとのネタ元でもあられるharukiさんのサイト(「CoolRubber」さま)の新TOPのあまりのすばらしさに、こっち方面にシフトすることにしました。ルブーの審判。

なお、このシリーズは、最初から最後まで勝手にharukiさんに捧げております。

(メモ)

拍手いただいておりました。ありがとうございました!

残暑厳しい折、どうぞお体にお気をつけて。