夢の夢──続翌檜 (チビナス×ルフィ)

肩にのっかった黄色い頭が、不意に重みを増した。

「……サンジ?」

返事は、ない。

ガキはもう、お休みの時間だ。

それに今日、こいつはすごく頑張った。つかれてるのは、当たり前だ。

なにしろ、おれの自慢のコックは、九歳になったばかりなんだから。

おれがこの年の頃は──毎日毎日、エースとサボに負けてた。

早く、一日も早くおっきくなって、兄ちゃんたちに追いついて、追い抜きたいと、そればっかり考えてた。

「──ふぃ、」

もぞもぞと、サンジがおれの腕の上で姿勢を変える。

着替えがないからって貸してやったおれの赤いシャツが、まるでスカートみたいに足まで覆ってる。

……あの頃のおれも、こんなくらいの大きさだったのかな。

兄ちゃんたちの目には、おれはどれほどちっこくて──弱かったんだろう。

今日、おれは海に落ちた。

メリーの船首から落ちるのは、とてもよくあることで、たいていはゾロやウソップが助けてくれる。

でも今日、おれのそばにはサンジしかいなくて。

……サンジは、なんのためらいもなく、おれを追っかけて、服のまま海に飛び込んだんだって、ナミが言った。

(……そんなに惚れられるなんて、男冥利に尽きるわね?ルフィ)

すうすうと、寝息が耳元で聞こえる。

魚のレストランで出逢ってから、「ルフィが大好き!」と言ってはばからない、おれのコック。

今日は頑張ったから、一緒に寝ていい?と、ハンモックに潜り込んでくる、小さな温かい生き物。

なあ。

十年待てとおまえは言うけど、十年経ったら、そのシャツはおまえにはきっと小さくなる。

ハンモックに二人で潜り込むなんて、できなくなる。

……おれは、エースと違う道を進んでる。

おまえは──十年後も、ここにいるのかな。

ここに、おれの腕の中に。

考えてもわかるわけない思いを振り切って。

小さな熱源を抱きしめて、目を閉じた。

☆☆

サンルへの3つの恋のお題:眠りにつく前に/きっと依存してる/何故か泣きそうになった http://shindanmaker.com/125562

小テーマ:彼シャツ

※チビナス×ル設定

ルフィ視点からのチビナスを書いてみたかっただけー。

ややルフィさんが乙女ですまぬ。

(メモ)

拍手ありがとうございました!