妖(サン誕/サンル+)

真夜中を過ぎて、仕事を終える。

疲れた体を引きずるように男部屋の扉を開いて、そのまま手を止めた。

──……またかよ。

薄暗い部屋の中に立つその男は、おれの気配を感じて、剣呑な視線を向けてくる。その目は明確に、「邪魔すんな」と告げている。

言われずとも、邪魔などする気はない。肩をすくめて自分の寝床に向かうと、灼けつくような視線はふいと逸らされた。

毛布を取り上げるふりをして、そっと様子を伺う。

男の目は先ほどとうって変わった優しさで、ひとつの寝床に注がれている。

寝息と寝言と鼾と、それから常軌を逸した長さの手足がはみ出した、この船の船長の寝床。

男に初めて会ったときのことを、ふと思い出す。

明るい日差しの下、太陽のように笑う男は、おれの申し出た茶の振る舞いを断った。

……明るい、優しい、弟思いの、常識的な男。

だがその判断は、明らかに間違えたものだったと言わざるを得ないだろう。

優しい目を寝床に向けて、男は静かに微笑む。

それは、命がけで守った愛しい「自分のもの」を見つめるまなざし。

──そいつはお前だけのモノで、お前だけが好きにできるもんだと、……そう思うか?

──そいつに触れることさえ、もうできないのに?

幽霊を見るのは、実のところ、初めてではない。

あの無人島の岩場越しに、バラティエの手すりの向こうに、それからメリーの舳先からも、理屈では説明できないものを何度も見た。

海に何が起ころうと、今さらおたつくつもりはない。

今この瞬間、ルフィを抱きしめる腕を持ち、口づける唇を持ち、共に生きる時間を持つおれに、何の不安がある?

今さら幻なんぞに奪われるはずはない、のに。

毛布を深く被り、目を閉じる。

──おれはきっと、どうかしてる。

☆☆

サンジ、はっぴば!

今年のお題

邪魔すんな

間違えた

またかよ

そう思うか?

どうかしてる

例年通り、モリさまのサンル誕企画からお借りしてきました。まずは小手調べの盛り合わせネタで。

薄暗くてスミマセン。

(メモ1)

優しいお言葉ありがとう!そのうち一緒にワンピレストラン行こうね!なんならイングリッシュティータイムにもつきあうよw

(メモ2)

いやまったく偉くはなく、新しい職場探さないと飢え死ぬし(遠い目)。

コーヒー味はあんまり美味しくなかったorz

(メモ3)

拍手ありがとうございました。