試作3(現パラ/A兄&S兄)
遠くから、陳腐なクリスマスソングが聞こえる。
「……さすがに寒いな、」
隣を歩くサボが、軽く身震いをした。
バイトあがりの帰り道。
もうとっくに日付は変わり、「クリスマスイヴ」は「クリスマス」に変身を遂げている。
「──なァ、エース」
幼なじみ兼親友兼兄弟兼好敵手の、こんな声を聞くのは久しぶりだ。
低く静かで深い、落ち着いた、真剣な声。
「なんだ?」
目を合わせず、静かに返した。
「おまえは、ルフィに何を望んでるんだ?」
脳裏に浮かぶのは、底抜けに明るい笑顔。
暗闇を照らす、太陽のような。
その太陽がなければ、おれは今、どこにいただろう?
「兄弟でいたいのか、──それとも、それとは違う関係を望んでるのか?」
たった一つの太陽。
……だが太陽は、おれだけでなく、遍く大地を照らす。
たとえば、おれの隣を歩く、この男をも。
「おまえはどうなんだよ?」
向き直って問い返す。
「さァな……おれにはわからない」
「何なんだよ、そりゃ。それでなんでおれに訊くんだ」
「おまえならわかってるかと思ってな」
「おまえにわかんねェことが、おれにわかるわけねェだろ!偏差値いくつ違うと思ってんだよ!」
「……そりゃそうだな」
「そこは否定しろよ!ムカつく奴だな!」
確かなのは。
もう、太陽を知らなかった頃には戻れない。
ただ、それだけ。
遠く、クリスマスソングが聞こえる。
夜明け前には、家に帰りつけるだろう。
☆☆
メル友のAOさん、返信不要のSMZさん、この手慣らしシリーズに感想ありがとうございます。励ましをいただいています!…イナーシャは相変わらず大ですが(T-T)
義兄ズの青春グラフィティ(嘘)の裏で、なにが起きているのかを考えると、なんとなく申し訳ない気もします(笑)
(メモ)
拍手ありがとうございました。