064 裏切り(サンル)
別に後ろ暗いことはない、と、自分に言い聞かせる。
寄港した小さな港町。
おそらくは生涯、二度と訪れることのない異国。
ちょっと目に付く容姿の娘から、町の情報を仕入れた。
町の治安、安い店、名物──どれも、旅する海賊には不可欠な情報だ。
それをもたらしてくれた可憐なレディにお茶を奢って、ちょいとプライベートな話をするくらいは当然。その会話が、少々艶を帯びたところで、自然な流れ。
誰に責められるいわれもない。
──たとえ、彼女の肩を抱いて宿に向かう道すがら、見知った麦わら帽子とすれ違ったとしても。
黒い目に、怒りはなかった。
驚愕も、衝撃も、嫉妬も、悲哀も、……何も。
いつも繰り返し自分に愛を誓う男の顔を確かに認め、そしてそのまま、無表情に行き過ぎる。
何も後ろ暗いことはない。
誰に責められるいわれもない。
自分に言い聞かせ、……そしてレディに、急用を思い出したことを詫びる。
自分はまだ、あの最大の獲物を、捕えることさえできていないのだ。
☆☆
このお題に合うキャラは誰かなーといろいろ悩んで、「悩んだときはサンルの法則」発動しましたが、考えてみればマフィアネタをやればよかったのか…?
サンジーノ×ルフィオーネ、いいなあ…読みてえ。ロミジュリもいいとこだが。つーか広島弁が難しいよなw
(メモ)
拍手ありがとうございました。