055 うらやましい(サンル)
カチャリと音をさせて、また新たに皿が積みあがる。
明日はおろか、数時間後のことさえわからぬ海の上。
時には空を飛び、あるいは戦いに身をさらすこの旅に、本来ならば華美で華奢な食器など分不相応なはずだが、この船のコックはかたくなに、磁器や陶器やガラスを手放そうとはしない。
──彼にとってはそれも、「料理」の重要な一要素なのだろう、と、船長は思う。
真っ白な皿を、繊細な手つきで洗い上げ、丁寧に水気を拭う。
その手は、戦いを知らない手。
盗み食い犯人を罰するときとは打って変わった優しい手つきに、つい見とれる。
──おれにも、たまにはこのくらいヤサシクしてもいいのに。
「……なんだ、船長。片付けを睨んでても、余り物は出ねェぞ?」
「う、……そんなん知ってる」
「じゃ、張り付いて何してんだ?」
「……見てたらダメか?」
「ダメだ」
「!?」
思わぬ言葉に見返すと、笑みを含んだ青い目が近づいてきた。
「……どうせなら皿じゃなくて、おれに見とれてくれよ?」
冗談めいた言葉に含まれた本気の響きを聞き取る暇もなく、言葉はもう一つの舌にからめられて消えた。
☆☆
甘々…か?
(メモ)
拍手ありがとうございました。
え、なに、もしかしてみんな、触手好き?