035 関(サンル)

夢を見ているのだ、と気づいたのは、前に立ちはだかったのが「おれ」だったからだ。

変身能力でも、他人の空似でもない、「おれ」自身。

我ながらよく似合う黒いスーツに、タバコをくわえて、苦虫を噛み潰したような顔をして。

──なあ、おまえ、本気かよ?

「おれ」が言う。

──この先に進んだって、いいことなんかねェぞ。

……そうだな、たぶん、そうだろう。

仲間やレディたちに奇異や好奇や軽蔑の目を向けられ、心のすべては食い荒らされて、安定も充足もなくなるだろう。

この道の先には、祝福も平穏もない。

だが。

「……それがどうしたって?」

にやりと笑ってみせてやる。

なあ、「おれ」。

おまえにだって、わかってるはずだ。

あの稀有な魂、あの覇王の心を得ることは、そのすべてに勝る甘美な幸福であると。

☆☆

知人を見舞うため、池袋の病院へ。

今年はじめ、会った二日後に倒れて、一時はかなり悪かったと聞いていたので、思ったより元気そうで安心した。

その後、同行の両親にお茶とベトナム料理をご馳走してもらう。美味しかった。

しかし片道一時間近いバスは、三半規管弱い私にはかなりつらい…。

(メモ)

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