試作そのいち(サンル/学パラネタ)

「ルフィ!ここか!?」

力任せに開いた部室のドアの向こうに、探す人影はおろか、人っ子一人いないのを認めて、サンジは息をつく。

「何処いった、あのクソ野郎……」

壁の時計は、無情にも定刻を通り過ぎた時刻を示す。

式典にはもう間に合わない。

いっそルフィは見捨てて、自分だけでも会場に向かうべきか、と迷いつつ、部室を見回したサンジの視線が、ふと机の上に落ちた。

引き裂かれたノートの一ページに、ミミズのダンスのような見慣れた文字。

『約束のとこで待ってる』

「……あのバカが」

置き手紙を取り上げて、窓を振り仰いだ。

部室から見える屋上の柵にもたれる、黒い影。

──なァ、サンジ。覚えてねェ?

──入学してすぐ、弁当忘れて困ってたら、おまえが弁当くれたんだ。

──卒業までにもっぺん、あの屋上で、サンジの弁当食いたいな。……卒業式の日、持ってきてくれよ。

──しし、気が向いたら、か。じゃ、……待ってる!

「あのクソ野郎が……そこ動くなよ」

忘れるわけなんかない。

弁当を渡したときの笑顔に、不覚にも見とれた。

毎朝、二つの弁当を詰めながら、屋上で話す話題を考えた。

しかし、朝九時から始まる卒業式が終わるまで待てないのか、あのバカは!

片手に提げた巨大な風呂敷包みが傾いていないのを一瞬だけ確かめて、サンジは屋上に向かって走り出した。

☆☆

準備運動ー。

シリアスなお題を見ると、明るくまとめてみたくなる悪癖。

学パラネタは我ながら珍しい。これは同級生設定ですな。

携帯電話を換えたのを機に、「携帯マンガ」というものを覚えました。

最初は、携帯メインで作品発表しておられる河本トモハル先生(元・サンル作家さん。18禁注意)の作品目当てだったが、だいたい読み尽くしたので新規開拓中。

最近読んだ「かわいくなりたい」(一堂ヒカル先生)は、男女モノだがなかなかサンルっぽい。つか、男がかなりSンジ。女の子はルフィにするにはさすがに乙女すぎるが(笑)

(メモ)

拍手ありがとうございました。