024 箱(サンル)
──さあて、お立ち会い。
ここに二つの箱がある。
箱ひとつには錠ひとつ。
錠ひとつには鍵ひとつ。
右の鍵は、左の箱に。
左の鍵は、右の箱に。
閉ざされた二つの箱を、さて、どう開く?
「……なんの謎だ、そりゃ」
窓からの月光と、蛍のようなタバコの火。光を与えるのは、その二つだけ。
真夜中のキッチンは、まるで蓋を閉ざした箱の中のようだ。
「知らねェ。……昔、道端でやってるのを見た」
「ふうん。──で、答えは?」
「……覚えてねェ」
この箱を一歩出れば、お子様な船長と女好きなコックは、目さえろくに見交わすことはない。
言葉もなく、ただ体を交わす回数だけが増えていく。
心のなかに隠した言葉は、今宵も錠には届かない。
☆☆
両片思いネタが増えているような。
ちなみに冒頭の謎は、ミヒャエル・エンデの「サーカス物語」ネタです。
(メモ)
拍手ありがとうございました。