辱められた故郷

※わりと過激な内容(残酷系?)を含むので注意。

世の中には、大きく分けて二種類の映画がある。
「事前にパンフを読んでおくべき映画」と、「事前にパンフを見ると興醒めする映画」だ。
サラエボの花」は紛れもなく前者である。

サラエボという言葉で、日本人は何を連想するだろう?
私の父はかつてサラエボ冬季オリンピックが開催される前、スポンサー企業関連の仕事で現地を訪れた。オリンピックのマスコットキャラクター・ブチコのグッズは今も我が家にある。
父には、三つの異なる宗教の民族が融和して暮らす古都がことのほか印象深かったようで、そこで起こった内戦、そして復興に関心を持っている。昨年は母と共に現地を訪れてもいる。
そしてそのサラエボを舞台にした映画は是非観たいとのことで、本日観覧の運びとなったのだ。

映画のパンフを読む限り、内戦の原因は明確ではないらしい。
独立にからんで各民族の利権の確保争いが激化した、というのが大ざっぱな事情のようだが、それだけで今までの隣人と殺し合うに至るものだろうか?
しかも最悪なことに、この内戦で使われたもっとも悪質な武器のひとつは、「レイプ」だった。
少数民族が多数民族の女性を拉致して妊娠するまでレイプ、中絶不可能になってから解放。ときには「それ」は女性の家族の面前で行われたという。
それは「民族浄化」と呼ばれたそうだ。
……吐き気がする。


で、そういう話を世界に知らしめることは間違いなく大切だと思うが。
正直、「サラエボの花」はその表現法として成功しているとは言い難いと思う。
個人的には、物語としての完成度が低いように思える。オブラートに包むあまり、焦点がぼやけている&伏線投げっぱなし&結末を観客の想像に委ねすぎ。同じ内戦テーマなら、以前観た「ホテル・ルワンダ」の方が数段格上だ。