その10

10:月だけが見ていた

「俺はお前を許さねェ!」

 ——こんや異装のげん月のした

「…本気か?」

ゾロの目が、真剣な光を帯びた。

ああ、いいな。……初めて会った時の、獣のような目。

その目を見て、仲間にしようと決めた。

 ——さらにも強く鼓を鳴らし

 ——うす月の雲をどよませ

ガキの頃から、ずっと探していた。

おれと一緒に夢に向かって走ってくれる、最初の仲間。

おまえがそれだと、一目でわかった。

 ——さらにただしく刃を合わせ

 ——霹靂の青火をくだし

 ——四方の夜の鬼神をまねき

もしもお前がおれのものにならないなら。

あそこで死んでしまっても構わなかった。

 ——夜風とどろきひのきはみだれ

 ——月は射そそぐ銀の矢並

 ——打つも果てるも火花のいのち

 ——太刀の軋りの消えぬひま

 ——太刀は稲妻萱穂のさやぎ

 ——獅子の星座に散る火の雨の

 ——消えてあとない天のがはら

 ——打つも果てるもひとつのいのち

お前は、おれだけのものだ。

☆☆☆

これにて「801小説の定番語彙で10のお題」コンプリート。

ラストは何故か(ホントに何故か)ゾロル。

…まあサンルで「月が見ていた」は、へぼんお題にあるからなあ(笑)

詩の引用は、宮沢賢治の「原体剣舞連」より。

…さて、またどっかで楽しいお題を探してこようかな(笑)

(メモ)

拍手ありがとうございました。よろしければまたお暇な時にでもご来訪いただければ嬉しいです。